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作者が現実あるいは生活を描かない詩歌はめずらしくない が
作者の現実あるいは生活をまったく反映しない詩歌はない
「この作品には私生活が描かれている/いない」の判定は だから
徒労におもわれる
レトリックで変形されているかいないかの差 だけかもしれないのに
そもそも 作者が作者自身の性格や生活やその他現実もろもろを
すべて理解していることは ありえない
作者が理解できていない自己の内奥を彫る あるいは掘ることが
作品をつくるということではないか
フィクションを描くというよりは ただ 現実というものの幅が
もっと あんがい 広いことを示すために
コアではなく ボーダーに立つこと