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85

憧れは愛ではない、あるいは愛を、心を、否定する。歌よ心なくありたまえ。

84

歯を食いしばって、感動から免れなくてはいけないこともある。

83

死を考えることは、復讐になんないよ。
ほっといても、世界のどこかがいつも、きみのどこかを食い破ろうとしているのだから。

82

ときどきは、心細くなることが必要である。さびしい終着駅で降りると、まばらな客は四方にそそくさと散り、自分だけが魔法のように残っている。地図はあるのだ。なんとも大雑把な地図をまさぐりながら、からだひとつで生きている。旅がはじまる。

夜行列車で、頭から足の先まで明らかに吸血鬼と分かる相手にでくわすことなど滅多にない、むしろ、魔は細部に宿るものだ、とベック氏は言うのである。
(『容疑者の夜行列車』多和田葉子)

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