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96

なにかを書くのは、多少なりとも、性的な感じをともなう。

夜中に書くのは、だから、ふつうのこと。
通勤電車の中、公衆の面前でなにごとか書きつけている人のほうがよほど淫靡だ。
そういう淫靡さをもたない書き手など信用できない。

95

手のとどかないものだけが詩だ。

それは天上的なものだけではない。行かなかった集会、会うことのなかった人、奏でおおせなかった音楽、過去、未来…について語られているとき、詩を語られていると思う。

「今ここ」に、「今ここにないもののすべて」を召喚しようとする。
強慾でない詩人なんかいない。

94

落ち着いた乱暴者になりたい。

93

「肉体か精神か」と「ニワトリかタマゴか」とは似ている。

92

atmosphere は sphere を抱いて美しい。

運命とか告白とかでなく。書くなら、ただ、気配を。

何かがないことでなく、何かがあることを、気配によって。

91

木のフロア・冷房・香辛料(ターメリック?)・コーヒー・フレグランス・服地・コンクリート・埃・石・鉄・水・息・若葉・花……

雨もよいの表参道を5分歩くだけで、さまざまな匂いが打ち寄せてくる。嗅覚がまずしくて、これくらいしかわからない。私が犬だったら大変な思いをしていたのかな。
自分の痕跡を残そうと必死な人たち――そう、私も――のあいだを歩く。

これらの匂いを私は覚えていられない。匂いは私を覚えない。ある人たちは私を覚えるが、ずっと覚えてはいない。匂いも私も、いずれ忘れられる。
さようなら。さようなら。

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