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私は狂気をあまり、ほとんど、たぶん、まだ、知らない。
ゆえなくロマンティックに感じていた季節を過ぎてなお。

狂気(たとえば被害妄想、たとえば尋常ならざるストーキング)は、音がまったく遮断されているためどこまでも透明な意識を一方方向へ貫いて進みやまない光の毒矢のようなものなのだろうか。

狂気とは、むしろ、明るい青空の下、さらなる紺碧を願い、見えざるものまでを見はるかすべく澄明を願う想いを言うのであろう。正常にあらぬことが狂気なのではない。
(「見えて明るし」永井陽子)