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209

かしこくなりたい
かしこくなりたくない
わかりたい
わかってしまいたくない
くわしく伝えたい
くわしく伝えれば伝えるほど零れてしまう
言葉以前
言葉以前のものを掬う
十指
肉の削げた部分からさらさら零れてしまう十指で

208

性欲から離れることはあっても、性(性差)について考えることからは一生離れられない。それなしではいられないものだとか、呪わしいものだとか、付随する制度を改善すべきであるとか。

ジェンダーという術語は一種のマナー、エレガンスのためにある。「あなたはあなたであり、ほかとはちがう人間だが、便宜上ほかの人間とともにカテゴライズさせてもらいますよ」。このエクスキューズを行おうとしない者の野蛮は憎まれてしかるべきである。

とりあえず合意的な性的関係をどなたかと共有することは、ギリシア旅行みたいなものだ。ギリシアへ行く機会があれば、ギリシアの空や獣や人や歴史にしたしむことも、がっかりすることもできる。それはギリシアをよく理解することとはすこし……かなり異なる。ギリシアへ行く機会を得なくても、ギリシアを理解する精神はありうる。

性はまじめに知的に思考されるべきものであり、感覚・官能はつぶさに繊細に観察されるべきものである。理の力を。

207

死者を悼むより自分が死ぬほうが楽だ(気分的に、ということ。身体的な話ではない)。
書くことはしんどい。
書くことはたのしい。
自己満足にすぎない。人類も世界も救えるわけがない。ほんの一滴の思いやりを含ませれば、他人の一人ぐらい……半人ぐらい……救えるかもしれない。偶然。
ほんの一滴の思いやり。
書くことは。

206

私は、私を、消費させない。

205

純文学というものがあるならそれはかならず前衛文学でなければならない。名作か駄作かにはとりあえず関係なくともあれ未来への関心をもつ者だけがかかわるジャンル。ところで私は未来にあまり関心をもてない。

204

うかうかと生きる希望をいだかせるものはたくさんある。
死への夢想は生きてしかつむぐことができない、と。
おまえはまだ甘き死を、死の縄目を心から知ってはいない、と。

203

詩人だって――もしかしたら詩人がいちばん――虚業家である。言葉の利鞘ばかり求める。

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