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285

知ることは一方通行路を行くこと
死を見すごしたり忘れたりしながらも
いちど刻まれた事実、記憶、秘密を
知らなかった状態へは、戻せない

覚えるとは過去のものにすること
人の顔や名を覚えると、その人はその瞬間から
どんどん思い出になっていってしまう

284

やすやすと人と誤りへ導くには、人の怒りを利用すればよい。
だからあなたは、あなたの怒りを利用されないようにしなければいけない。

あなたは、あなたの敵にならないようにしなければいけない。
憎んでいたはずのありかたをいつしか纏っていたということがないように。

あなたの、ある側面をわかってくれる人はいる。
あなたの、すべてをわかってくれる人はいない。
まちがえてはいけないよ。

283

ランク付けすることをいちど覚えてしまうと、ランク付けの無意味さを学びなおすのに時間がかかる。上から見おろしていたものを横からながめられるようになるまで、さらにいえば、上などなかったのだと知るまでの時間が。知るまでの……

知る、とは他の行為よりも上位の行為か……

などと、ほら、考えてしまうだろう?

282

アヴァンギャルドは何らかの保守性、保証、保身を前提にしていなくては成立しない。
型を極限まで変形するために、型の体力を信頼し、型の完全破壊をすんでのところで回避せねばならない。
完全な裏切りはありえない。もしくは、不完全な裏切りという名の裏切りがある。

281

object あるいは 他者について

目的語という、さびしく、きびしい用法をいつ覚えたのだろう。
目的語はかならず他者である。
私は[ ]を思う、というとき、[ ]は私ではない。

*

演じる人、俳優であることは本来、宗教的なありかたなのだろう。
他の人格を演じることは他者の前に全身を投げ出し対象となること。
他者とは最終的には超越者にほかならない。

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