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西荻ブックマーク

上の企画で11/11、小谷真理さんとお話します。
タイトルは「ゴシックの夢、ゴシックのリアル」
お問合せ→西荻コム(fax: 03-6762-9100) or
http://members.jcom.home.ne.jp/43zoo/nbm/nbm2.htm

さて、そのとき話題とするであろう新刊

『ゴシックスピリット』詳細目次

今回は言及した対象が目次に記されておらず
(言及対象にかかわらず読んでいただきたいわけではありますが)
帯にはその代表的な一部が示されているものの、
すべてではありませんので、ともかくわかりやすさのためにここに記録します。

高原英理『ゴシックスピリット』内容紹介

0 古城への招待
    (イントロダクション、ゴシックの城、ゴシックな心性)

1 ゴシックスピリット
    (前提となる現在のゴシックと過去のゴシックの知識)
  1 ゴシックな空間
     ――倉橋由美子『聖少女』より「喫茶モンク」
  2 モダン・ゴシック
     ――山崎まどか『オードリーとフランソワーズ』より「ゴスという乙女道」
  3 崇高・耽美・反抗
     ――「ゴシック」の起源、ゴシックロマンスの歴史

2 メランコリー
    (メランコリックな心情から浸る怪奇の世界と優しい怪物たち)
  1 優しい魔物たち
     ――レイ・ブラッドベリ『塵よりよみがえり』
  2 死の情緒
     ――トマス・グレイと墓地派の詩人、ゴスロックの牙城「バッドケイブ」
  3 子供心
     ――オブライエン「墓を愛した少年」、
       モーリス・センダック「かいじゅうたちのいるところ」、
                 「まどのそとの そのまたむこう」
  4 メンタルヘルスとゴシック
     ――ロブ@大月『リストカットシンドローム』とゴシック

3 天使と悪魔のいる処
    (カトリックと中世ヨーロッパの栄光と無残、その不条理と魅惑)
  1 天使
     ――パトリック・マグラア「天使」、須永朝彦「天使」
  2 血の匂い薔薇の香り
     ――ヨーハン・ホイジンガ『中世の秋』
  3 悪魔
     ――ジョルジュ・バタイユ『ジル・ド・レ論』
  4 こころ虔【つつま】しきためにはあらず
     ――塚本邦雄『荊冠伝説』

4 死者たち
    (1980年代以後、ゴシックの一様式となったリヴィング・デッドとパンク)
  1 生ける死者の八〇年代
     ――ジョージ・A・ロメロ「ゾンビ」、ルチオ・フルチ「サンゲリア」
  2 ゾンビ・ディテクティヴ
     ――山口雅也『生ける屍の死』
  3 キュート・ビンビ
     ――『水野純子のシンデラーラちゃん』
  4 甦った死者の起源
     ――『ヨハネ伝』第11章
  5 忌まわしい聖者
     ――レオニード・アンドレーエフ「ラザルス」

5 地下水脈
    (ゴシックな感受性の先達としての1960年代「アングラ」アート)
  1 あるべき豪華とあるべき悲惨
     ――三島由紀夫『黒蜥蜴』と寺山修司『毛皮のマリー』
  2 説経節の暗がりから
     ――寺山修司『身毒丸』、説経節『小栗判官』
  3 「異端」の六〇年代
     ――澁澤龍彦と雑誌「血と薔薇」
  4 「ガロ」の漫画家から
     ――丸尾末広、花輪和一、大越孝太郎、谷弘兒

6 江戸時代のゴシックスピリット
    (現在から見るときわめてゴシックな江戸後期の怪談芝居・読本)
  1 怨霊実話と怨霊狂言
     ――『四谷雑談集』と『東海道四谷怪談』、京極夏彦『嗤う伊右衛門』
  2 無残狂言
     ――鶴屋南北『盟三五大切』
  3 江戸のリヴィング・デッド
     ――小平次伝説、鈴木泉三郎『生きてゐる小平次』、京極夏彦『覘き小平次』
  4 江戸の暗黒図鑑
     ――山東京伝『復讐奇談安積沼』

7 東京猟奇交通図
    (戦前のゴシック、1930年代東京の猟奇探偵小説の世界)
  1 都市の猟奇者たち
     ――大正モダニズムと昭和エログロナンセンス、
       谷崎順一郎、宇野浩二、村山槐多
  2 乱歩東京迷宮図
     ――江戸川乱歩、横溝正史、ヴァルター・ベンヤミン
  3 夜の市民たち
     ――江戸川乱歩、城昌幸、海野十三
  4 少年少女の夢見るところ
     ――江戸川乱歩、稲垣足穂、川端康成、三島由紀夫

8 リテラリーゴシック
    (ゴシックな文学を、あるいは愛する文学をゴシックな視線で、語る)
  1 少女のレジスタンス――シルヴィア・プラス「嵐が丘」
  2 女王の心――フィオナ・マクラウド「悲しき女王」
  3 薔薇の影で――皆川博子『薔薇密室』、中井英夫「火星植物園」
  4 韻文の招き――近松門左衛門『女殺油地獄』
  5 短歌のゴス史――塚本邦雄、現代短歌
  6 美貌という権力――三島由紀夫『暁の寺』
  7 世界の片隅で呪詛を叫んだ獣――トマス・ハリス『羊たちの沈黙』
  8 無の呼びかけ――たま「電車かもしれない」と近藤聡乃
  9 ゴシックロマンスの可能性――ジュリアン・グラック『アルゴールの城にて』
  10 夜ごと殺される女たち――川口晴美『やわらかな檻』

9 アートゴシック(作品収録作家名のみ、映画は題名のみ)
    ベクシンスキー
    フィリップ・フィショ
    トレヴァー・ブラウン
    やなぎみわ
    堀江ケニー
    作場知生
    山本タカト
    近藤聡乃
    亡月王
    江本創
    谷弘兒
    大越孝太郎        
    丸尾末広
    渡辺東
    映画「箪笥」DVDジャケット
    映画「CASSHERN」DVDジャケット

10 あとがき

  なお、アートゴシックの章とは別に、各章扉には次のアーティストの方々の作品を
  使用させていただきました

    サイモン・マースデン
    ピラネージ
    花蟲
    三浦悦子
    水野純子
    鋤田正義
    葛飾北斎
    花輪和一
    ジョン・サンテリネロス

また、今回はすべての図版に私から短文を付しました。            

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クリティカルに

9/1、お招きいただいたのを幸い、日本ではその開催が初・さらにアジアでも初という、世界SF大会、ワールドコンの一企画に参加。
私が参加したのは「SFの中のゴシックカルチャー」というパネルディスカッション。
ほかに出演は、高柳カヨ子さん、マーク・ドリスコールさん。
司会、小谷真理さん。
とてもうまくいったパネルだったと自画自賛してみたい。
いややはりマークさんと高柳さんとそして司会の小谷さんあってのことだけど。

マークさんは、死について考えた(いわばゴスな志向の)哲学者としてベンヤミン、ハイデガー、そして西田幾多郎と京都学派をあげての指摘。
アメリカにはそうした死の哲学に対応するものがないのではないか、という批判もあった。

高柳さんはまず示すゴスの女王的衣装。
ご本人が解剖医でもある方ですが、死体のことをいくつか、そして腐ったものはゴスとしないという主張、死体は骨がよいという嗜好。

私が語ったのは「日本産ゴスとゴス的世界感受」という話。

1 ゴス的な映像としてのフローリア・シジスモンディと寺山修司の舞台写真との類似
  ↓
2 寺山修司の芝居「身毒丸」とその原作、説経節「しんとく丸」
          ←(ここ「日本産ゴス」)
  ↓
3 日本の中世とホイジンガの伝える「中世の秋」
          ←(ここ「ゴス的世界感受」)
  ↓
4 貴種流離譚としての説経節「をぐり」と「スターウォーズ」エピソード3
          ←(ここSF)

といったところですが、短時間にあわせてのこともあり、ここでいう「中世」について、ホレス・ウォルポールらの憧れ理想化した「幻想の中世」と実際の歴史研究上で想定される中世との差をよく弁別しつつ語ることができなかったため、「目からうろこ・驚き」とみてくださる方もある一方、「トンデモ?」という感想もあり。
今回の叙述による限り、その感想も正しいとは思いますので、以後、もう少々時間をかけて、ホイジンガの中世とゴシックロマンスの中世の一致点と相違点をよく提示した上で再度語りたい。

と、言っていると、今回私がパネルで語ったことをも含む

『ゴシックスピリット』(朝日新聞社刊、2400円税別)

が9/7には書店に並ぶこととなっていたのでした。
当初の予定より定価が上がったのが残念ではありますが、今回は図版が大変多く、ページも多く、さらにミルキィさんの極上装丁なので許してね。

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