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乱調なれど

『月光果樹園』内容予告その2

■第三章は複数の作家それぞれについて言及した章。同じく複数の作家について記した第十章と比べ、どちらかと言えば若さと現在とを意識し、アクチュアルな対象として見ているところ、青年にとって、永遠の抵抗であり爆弾であるところの檸檬(れもん)を章題とした。

「生涯一憧憬者・岩井俊二の小説」は題名どおり、映画監督岩井俊二が小説として発表した作についての文で、特に『ウォーレスの人魚』『リリィ・シュシュのすべて』が中心。『リリィ・シュシュ』は映画とその原作にあたる小説とではストーリーにやや違いがある。今顧みるとやはり『ウォーレスの人魚』がよくも悪くも作家岩井俊二の志向のあり方をよく示していると思う。

「『バガージマヌパナス』ヌパナス」は池上永一の小説「バガージマヌパナス」、栗原まもるによるその漫画化作品について。「バガージマヌパナス」というのは沖縄の言葉で「わが島の話」という意味だそうで、つまりこれは「『わが島の話』の話」ということ。

「アンドロギュヌス・ロマンティック仕様」は松村栄子の『紫の砂漠』がハルキ文庫に収録されたさい、依頼されて書いた解説。私は松村の芥川賞受賞作「至高聖所(アバトーン)」をとてもよい作と思うが、当時、「ニューアカ」の一員を自認し、「高級作家かどうか、俺が決めてやる」と言わんばかりの批評家が松村を頭から軽んじた言い方で評していたことにうんざりした記憶がある。その批評家の信奉する「高級さ」がどれほど大切なものか。こういう現場を見ているから、私はだんだん、時流に合わせてコメントを要求される形式の文芸批評を真剣に行なうに値しないと感じるようになった。

「小川洋子の記憶」は先に三省堂版高校国語指導書に一部引用を許したとしてここにも一部記載した。「博士の愛した数式」「密やかな結晶」「アンネ・フランクの記憶」を主な例として記す。

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