かの夕べ
懐かしいというにもいくつか種類があって、あきらかに自己の体験の外にある、過去に知った想像への懐かしさというのが実は一番根強い気がする。
それはいつも、こんなものだ、と言い切れない。
なのに思いもかけないところで不自然な価値の決定を導く。
長らく、60年代のアヴァンギャルドアートに何かの決定的な感じがあって、今も脱してはいない。
そこには孤児のさみしさが漂っていて、都会の夜に隠れて輝かしい、あるいは恐ろしい、闇に向かって走り続けるような徒労と危険とが待っている。
最初にそうした危うさを教えたのは寺山だろうか。三島だろうか。実質、何だったのかわかりはしない。その頃の私の意識は未だ幼少期を少し過ぎた程度である。
空気、と言うしかないので今はそう記しておく。60年代の都市の夜の空気がひどく懐かしい。なお、私は田舎育ちでその頃、都市の夜など知りはしない。
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