思いつきで簡単な執筆テーマ地図みたいなメモを示してみることにした。メモなのでしばらくして考えが変ればまた書き直したものを示す。
1 【少年】 『無垢の力』によって批評的言及はほぼ完了したが、エッセイの形ならいつでも再開する。足穂的に少年を描く小説は「青色夢硝子」(『書物の王国6 鉱物』所収)、「六月の夜の都会の空」(『月光果樹園』所収)。また現在、美的な意味でない様相の少年愛問題をテーマにした小説を書いている。完成は今年中の予定。
2 【少女】 『少女領域』に代表される批評的言及は現在休止している。小説は「少女のための鏖殺作法」(『幻視の文学1985』収録)、「樹影譚」「影女抄」「緋の間」(『抒情的恐怖群』収録)。『神野悪五郎只今退散仕る』も少女の冒険である。
3 【ゴシック】 これも批評的にはやらないがいつでも言及の用意はある。「トーキングヘッズ」での連載が多くこれにあたる。ただもう先行き案内のようなことはできない。フィクションなら『抒情的恐怖群』収録作等。ゴシックストーリーとしては「影女抄」「グレー・グレー」が典型。
4 【妖怪】 『神野悪五郎只今退散仕る』が今のところ決定版。続編は状況が許せば可能。これとは別系列の、可愛らしさを意識した妖怪ストーリーがあって、こちらもそのうち完成するだろうと思う。逆に本当に怖い系なら「呪い田」(『抒情的恐怖群』)と「かごめ魍魎」。
5 【怪談】 「幽」誌にささやかな連載を続けている。それ以上は今はやらない。「水漬く屍、草生す屍」(『闇の司』に併録)および『抒情的恐怖群』収録作のいくつかには怪談をモデルとしているところがある。
6 【猟奇】 『闇の司』が頂点と思う。ほかに「町の底」「緋の間」(『抒情的恐怖群』)、「日の暮れ語り」「よくない道」など。
7 【きのこ】 昨年の「日々のきのこ」が現在のところ唯一の達成地点。飯沢耕太郎さんからは続編を期待していると言っていただいたので、いずれとりかかるが、まだまだ時間は必要だ。きのこの菌糸が地下で満杯になって子実体(つまりきのこ)が出るには大変時間がかかることがある。「日々のきのこ」は書き始めから完成まで20年かかっている。
8 【遍歩】 「遍歩する二人」で始めたものだが、気持ち的に源流は詩として書かれた『うさと私』。この続きにいくらか未発表のものがあっていつか全作をまとめたい。「遍歩する私」も続編は考えているが、いつになるかわからない。「グレー・グレー」にもこの傾向は少しある。
9 【都市伝説】 今年、「記憶の暮方」で大きく用いてみた。「町の底」「呪い田」「樹影譚」「帰省録」もそういうところから始まっている。
10 【異世界】 作品集に未収録のため、よく知られていないが、初期の頃、私は主に異世界幻想小説を書いた。「少女のための鏖殺作法」「黄昏黙示録」等。後者を拡大した連作があるがまだ完結していない。いつになるのか。それと「クリスタリジーレナー」(『稲生モノノケ大全 陽之巻』収録)を発端とする鉱物的別世界の物語がほぼ書かれており、この末尾に、以前「群像」に掲載した「石性感情」を置くことになる予定なのだが、これもいつになるか。
11 【鉱物】 仕事として『書物の王国6 鉱物』。それと実作は上に記した作品。「青色夢硝子」もこのテーマ。
12 【詩歌】 『うさと私』も詩だが、「夏が来ない」(『月光果樹園』に一部収録)「二輪行」等の詩、あるいは短歌俳句(『ゴシックスピリット』『月光果樹園』に一部収録)もある。それとは別に「詩について考えた小説」が「ポエティック・クラッシュ」。こういうのはこの先続けられるかどうかわからない。詩とは別に擬似文壇小説というようなのもありかなとも思う。さらに韻文の呪術性ということなら「記憶の暮方」。ほかに「かごめ魍魎」「闇の司」「水漬く屍、草生す屍」「緋の間」等のホラーノヴェルはいずれも定型詩をモティーフにしている。
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