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友あり集うこともよし

5/15西荻ブックマークきのこ会、僅かでもこんな感じを伝えられるとよいと思ったり ↓


 大型ばかりに目を奪われていると、足元にいきなり火炎茸が恐ろしいほどの緋朱色を目に焼き付ける。猛毒と言われている。舐めただけでも危ないそうだ。にしても鮮やかで、火炎と呼ばれるのも頷ける。
 道の両側に沿って、これは「袖集団」と呼ばれるそれか、傘はかなり大きいものの、比較的背の低い種類が帯状に繁茂する。傘の上中央部に星形に裂けた小さな穴があり、そこからときおり、ぽっ、ぽっ、と湯気のようなものを噴き上げている。胞子を噴いているのだ。この種類は雨の日は穴を閉じる。雨中では胞子を噴き出しても広くまき散らすことができないからだ。
 それは細かい胞子の作る煙幕なのだが、見ていると、ふと、何かの形に見えてくる。
 登りあがる龍のような形、佇む女のように見えるもの。
 さらにまた、数歩先に広がるそれが包みこむ無数の手のようだと見れば、どうも指のひとつひとつまで確かめられる。深海に潜んでいそうな魚や水母。渦を巻くもの、四方へ網を広げるように散るもの。
 名づけようもないが、夢に見たように思えてならないもの。
 この種類の茸の胞子には、あるいは幻覚を促す成分が含まれているのかも知れない。面白く見とれてしまう様子なのだ。
(「日々のきのこ」より)

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