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『書物の王国』品切れ書目

国書刊行会の『書物の王国』全20巻だが、一昨日記した『私が選ぶ国書刊行会の3冊』の巻末リストを見ると、品切れと在庫僅少のものには印がついていて、『書物の王国』では以下の巻が品切れ。

1  架空の町
4  月
8  美少年
9  両性具有
10 同性愛
12 吸血鬼

8~12巻のところに注目です。このシリーズはどうも腐の人御用達であったもようですね。

なお、在庫僅少は以下。

6  鉱物
11 分身
18 妖怪

「架空の町」「月」とともにこちらは文学上のテーマとしての一般的人気か。
ただ、上、いずれも、配本順にかなり関係がありますが。

下にも記しましたが「鉱物」は私の編集によるもの。

おや「妖怪」が出たのでまたもう一度。↓
★ 高原英理『神野悪五郎只今退散仕る』(毎日新聞社) → 
ついでに同じ版元から
★ 高原英理『抒情的恐怖群』(毎日新聞社) → 

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『私が選ぶ国書刊行会の3冊』

という冊子(非売品)が送られてきた。
のは私もそこで3冊をあげてコメントしているからだが、これは「国書刊行会40周年記念小冊子」で、9月から全国の書店で行われる国書刊行会40周年記念フェアのさいに置かれるものらしい。
無料配布のはずだが、それにしては薄めの新書くらいのページ数に、サイズもちょうど新書と同じである。
カラーの表紙・背表紙・裏表紙が連続して澁澤家の博物棚みたいになっていてとてもよい。
また執筆者が豪華で、どうして私に依頼がきたのか今なお不思議である。
9月から各書店に置かれるらしいから、早いめに入手しないとすぐなくなってしまいそうだ。
フェアではここで推薦された本の中から入荷可能なものが出されるそうであります。

国書刊行会ゆかりの本として以下お知らせ。

★ 高原英理『少女領域』(国書刊行会1999年刊) → / アマゾン →

 私の最初の単著。現在かなり在庫が少ない。もしいずれ入手なさりたいとお考えであった方は今のうちにどうぞ。ただし今回のフェアでは出品されません。嶽本野ばらさんみたいに自分で自分の国書刊行会刊行本を推薦しとけばよかったか。でもわざわざそうしたところでやっぱりフェアには並ばないだろうし、今の段階ではもうあんま意味ないし。

★ 高原英理編『書物の王国 6 鉱物』(国書刊行会1997年刊) → / アマゾン →

 ブルトン、ピエール・ド・マンディアルグ、ガスカール、ノヴァーリス、ホフマン、サンド、バジョーフ、澁澤龍彦、種村季弘、木内石亭、稲垣足穂、宮沢賢治、明石海人、ほか。
 で、澁澤さんのアンソロジー『暗黒のメルヘン』に倣って、そこに自作一篇、「青色夢硝子」をこっそり入れた。
「青色夢硝子」が故山口小夜子さんの朗読テキストとされたことも以前何度か記した。
 この『第6巻・鉱物』も、上の冊子の巻末リストによれば在庫僅少とのことだ。『書物の王国』全体として推薦なさった方がいらしたため、リスト入りしていますが、この第6巻がフェアに並ぶかどうかは微妙。でもいい本です。

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ヘルタースケルター

蜷川実花監督映画「ヘルタースケルター」最終日にようやく見ることができた。
よいと思います。
オリジナルの場面もあるがほぼ原作に忠実で、かつ、その問題系を共有していることがわかる作りに賛成できた。賛成できたところでできのよしあしには関係ないが、かなりよく生かして成功していると思う。
用いられる俳優の美の序列が的確に組まれていてキャスティングが正確で酷薄である。
その酷薄さが日常とは別のリアリティを産む。後半はかなり楳図かずおスピリットな気もした。ホラーというのではなくて「イアラ」的・心理的な意味で。

やっぱり、りりこは綺麗になったタマミちゃんだった。

麻田検事の、今ではちょっと「ぷっ」な台詞(完全に同じでないかも知れないが原作踏襲)に秘書が「ポエムですか?」とつっこむところに現在を感じた(てかこのつっこみ原作にないよね確か)。
しかし、世界そのものはやはり90年代的な感じか。
りりこの妹のその後がほんのワンシーンでとても原作をよく再現していた。りりこのような攻撃的なところはないだろうけど、この先、過剰に愛され捨てられるのだろうと思わせるところ。
沢尻エリカのりりこは原作の絵とは違うがこれはこれで悪くない。
それに対し、吉川こずえ役の水原希子はもともと岡崎京子の描く美少女にとてもよく似ている。口の大きいところとか。
原作にあるりりこやこずえの内的独白もそのままでなく、うまく処理されていた。
もともとの整形方法が荒唐無稽で、その無理さや効率の悪さリスクの大きさからそれが実際にあったとしても誰もそこまではやらない気がするのだが、整形後も常時薬を使わないとならない理由を(確かこれは原作にはない)ある程度納得のゆく形で明かしていたのも面白い。

正直前半はちょっと退屈というか面倒というか、あああ、この先、あれもこれもやってこれも通過して、このくだりも消化して、と思うとなんか重苦しい。原作を知っている者の場合だが。
それはいくつかのりりこのシーンが冗長だったりするからでもある。監督はきっと沢尻のイイ顔(わざと汚れて醜いときとか)を撮っていると捨てがたくなったのだろう。その点では若干編集に難あり。
が、中盤からは、峠を越えた感じでよくなる。沢尻号泣シーンにも慣れる。で、やっぱり麻田検事の台詞だけが浮いている。原作のモデルの問題かなー?とちょいイジワルかましてみる。
それと、りりこが婚約したつもりなのに裏切った男が実際に結婚した社長令嬢も実は例の整形をしていて、事件発覚・医院閉鎖後、胸が崩れてきて、あなたの望みにあわせたのに、とか言うシーンがカットされていたのがちょっと残念。いやこれは特に復讐や因果応報的な意味合いではなく、それほど立場のよい女でさえ、りりこと同じ欲望を共有していたのだと示す意味として。

ともかく美醜の差の意識がどれだけ自意識と他者との関係を過剰に無残に作り上げるか、楳図かずお以来、臓腑を抉るように感じさせてくれる。普段平和に、なるべく考えないようにしているところばかりを強調される。
原作とはやや違うがりりこ単独会見の顛末はクールでよい。ラストはそのままでこれもよい。
というわけで、全体としてはとてもよい映画だと思うのであった。

映画については以上ですが、原作については以下の本に書きました。

高原英理『ゴシックハート』(講談社刊) →  / なおアマゾンはこちら

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無残漫画比べ

最近なら山口貴由の『シグルイ』だろうか。人体解剖図みたいな漫画だった。一驚。
同じ残酷時代劇では平田弘史の諸作が永遠の名作でしょう。
『つんではくずし』及びその改稿である『大地獄城』はそうした傾向を求める人なら一度は読むべし。
なお、『シグルイ』も『つんではくずし』『大地獄城』も原作があっていずれも南條範夫だ。
特に後者の原作である『復讐鬼』は心理・肉体双方で無残の極限まで達している。南條範夫は肉体の損壊と被虐加虐のむごさを描いた作家として世界的というべきだろう。ほかに比較できるのはミルボーの『責苦の庭』か。ただこちらが主に処刑の技術的な叙述であるのに対し、南條のそれは心理的な絶望の仕掛け方までひとつひとつ描いていてもうこの先はない感じ。
ただ、心理的な部分は別にして、やはり残酷な場面というのは映像が最もダイレクトに伝わるので、南條の小説に精緻な絵をつけられると、おそらく表現全体の中でこれを越えるものはもうないかも知れない。あとは映画などか。だがこちらは今のところ別の理由で無理だろうし、よほど金をかけてやらないとチープにやられたら元も子もない(それを逆手にとった残酷アングラ映画は好きですが)。
平田弘史にはもうひとつ『血だるま剣法』という金字塔があって、これに原作はなかったように思う。
途中からの展開が非現実的であるものの、あの絵で描かれるとリアリティとして受け止めるほかなくなるので、やはり表現はその細部の巧さ次第なのだなあ。
そこでやはり楳図かずおとなりますか。名作は山ほどあるが時代ものに限るなら、『復讐鬼人』(これは南條の作とは関係ない)、『猫面』(『黒いねこ面』とは別、発想としては『鬼姫』と共通すると思える作品)なんていうのが陰惨で心震えます。

さて、本日の宣伝は無残方面から、秋里光彦『闇の司』(ハルキ・ホラー文庫)
これは現在版元にも在庫がないらしいが、ネット上ではけっこう安く中古が買えます。
南條範夫には及ばないかも知れないが、残酷さの度はかなり高いと思う。あとは猟奇と怪奇、それと韻文性で勝負、でしょうか。
残酷な小説なら『抒情的恐怖群』にも収録ありですが、ほかに、雑誌「小説推理」掲載の「日の暮れ語り」「よくない道」などはそこそこでないかと思います。が、これはもう一般には手に入らないですね。

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妖怪漫画比べ

『夏目友人帳』と『ぬらりひょんの孫』、アニメーションでしか見ていないが、自分の好みでは『夏目友人帳』。
『ぬらりひょんの孫』はそのままヤクザの抗争をモデルにしていて、見ている限りは面白いがそれ以上に求めるものはない。
ずっと前からコミックスでの『百鬼夜行抄』をよいと思っていたが、ただ、ストーリーが凝っていて頭よすぎるため、かなりよく読まないとラストの意味がわかりにくいときもある。しかしこの作者はミステリーとしてもとてもうまい。
その点、『夏目友人帳』は情感で勝負なので考え過ぎずにすむ。
いずれも優れてはいるが、今、人気があるのもうなずけると思う『夏目友人帳』。
厳密には妖怪ものではないが『蟲師』もなんとなく思い出す、でもこちらはもっと淋しい感じが強かった。
ほかにはかつての『うしおととら』がよかった。妖怪ものと限定されないが高橋葉介の『学校怪談』も推薦。

すかさず宣伝もしておきましょう
高原英理『神野悪五郎只今退散仕る』(毎日新聞社刊)
妖怪てんこ盛りでお届けいたします。
(人によって)ちょっとだけ泣けるとこもあります。

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ここらでまたしても

一昨日アップされた記事だそうですが、「ダ・ヴィンチ電子ナビ」というサイトの中に

「呪われそうで本棚に置きたくない!表紙が怖過ぎる怪談本ランキング」

というコーナーができていて→

第四位に 高原英理『抒情的恐怖群』 がランクインしていた。

ダ・ヴィンチさん、ご執筆のbookrakoさん、ご紹介ありがとう。
それとこの怖い表紙に作品を使わせていただいた西尾康之さんありがとう。

リストには福澤徹三さんの本も平山夢明さんの本もあがっていますね。
西尾さんはファインアートの方ですが、アート作品を使うという意味では、表紙にベクシンスキの作品を使った本が、福澤さんにも平山さんにもあった(二位の福澤さんの本もそのひとつ。平山さんのはまた別の)。

それはいいのだが、ただ、「呪われそうで本棚に置きたくない」というのは。
ほかは知らないけど『抒情的恐怖群』は持っていても呪われないので本棚に置いていただけると幸いです(中に呪いの話はあるけど)。

と定期的に宣伝できて重畳。

なお、佐藤弓生『うたう百物語』は表紙・装丁も綺麗。と書いてくださる方多数でした。

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最近の佐藤弓生の言葉

ポエム復権。

佐藤弓生『うたう百物語』(メディアファクトリー刊)1680円
装画:黒田潔/装丁:名久井直子
道尾秀介・穂村弘両氏推薦
よろ。

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佐藤弓生『うたう百物語』

佐藤弓生『うたう百物語』刊行。→

書店にあります。が、詩歌コーナーなのか、怪談コーナーなのか。
ともあれ出だしはよいらしい。

追加
「ダ・ヴィンチ」9月号184~185ページに道尾秀介さんと佐藤弓生との対談掲載。上記書について。

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