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無残漫画比べ

最近なら山口貴由の『シグルイ』だろうか。人体解剖図みたいな漫画だった。一驚。
同じ残酷時代劇では平田弘史の諸作が永遠の名作でしょう。
『つんではくずし』及びその改稿である『大地獄城』はそうした傾向を求める人なら一度は読むべし。
なお、『シグルイ』も『つんではくずし』『大地獄城』も原作があっていずれも南條範夫だ。
特に後者の原作である『復讐鬼』は心理・肉体双方で無残の極限まで達している。南條範夫は肉体の損壊と被虐加虐のむごさを描いた作家として世界的というべきだろう。ほかに比較できるのはミルボーの『責苦の庭』か。ただこちらが主に処刑の技術的な叙述であるのに対し、南條のそれは心理的な絶望の仕掛け方までひとつひとつ描いていてもうこの先はない感じ。
ただ、心理的な部分は別にして、やはり残酷な場面というのは映像が最もダイレクトに伝わるので、南條の小説に精緻な絵をつけられると、おそらく表現全体の中でこれを越えるものはもうないかも知れない。あとは映画などか。だがこちらは今のところ別の理由で無理だろうし、よほど金をかけてやらないとチープにやられたら元も子もない(それを逆手にとった残酷アングラ映画は好きですが)。
平田弘史にはもうひとつ『血だるま剣法』という金字塔があって、これに原作はなかったように思う。
途中からの展開が非現実的であるものの、あの絵で描かれるとリアリティとして受け止めるほかなくなるので、やはり表現はその細部の巧さ次第なのだなあ。
そこでやはり楳図かずおとなりますか。名作は山ほどあるが時代ものに限るなら、『復讐鬼人』(これは南條の作とは関係ない)、『猫面』(『黒いねこ面』とは別、発想としては『鬼姫』と共通すると思える作品)なんていうのが陰惨で心震えます。

さて、本日の宣伝は無残方面から、秋里光彦『闇の司』(ハルキ・ホラー文庫)
これは現在版元にも在庫がないらしいが、ネット上ではけっこう安く中古が買えます。
南條範夫には及ばないかも知れないが、残酷さの度はかなり高いと思う。あとは猟奇と怪奇、それと韻文性で勝負、でしょうか。
残酷な小説なら『抒情的恐怖群』にも収録ありですが、ほかに、雑誌「小説推理」掲載の「日の暮れ語り」「よくない道」などはそこそこでないかと思います。が、これはもう一般には手に入らないですね。

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