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『江戸川乱歩妖美劇画館』

『江戸川乱歩妖美劇画館』1・2巻が本日来た。
先に一度紹介したもので、
第1巻が上村一夫による「パノラマ島奇談」と桑田次郎による「地獄風景」。
第2巻が石川球太による「白昼夢」「人間椅子」「芋虫」「お勢地獄」(「お勢登場」)「押絵と旅する男」、真崎・守による「巡礼万華鏡」(「鏡地獄」による)、池上遼一による「お勢登場」。
来月には第3巻、横山光輝による「白髪鬼」とそれによるオリジナル「闇の顔」を収録とのこと。

石川球太による四作品(「押絵と旅する男」は別の掲載誌)連続掲載は確か1970年、「週刊少年キング」で、私はこの第一回「白昼夢」から続けて読んでいたが、たまたま「芋虫」掲載号だけ買えないまま次の週になり、中でも最もショッキングであろうこの一作だけを読み逃してしまった。
その後、今に至るまで、(私家版は知らないが)公の単行本としてこれらの四作品は一度も刊行されず、それで古本屋で1970年の「少年キング」を見つけるとは掲載作品を確認の後、「白昼夢」「人間椅子」「お勢地獄」掲載号までは買いそろえたものの、ここでも「芋虫」掲載号だけ入手できないままであった。
というわけで、長年の望みをはたすことができて本当にうれしい。
なお、今回、若干、石川氏が手を入れているとのことで、初出とそれほど違わないとは思うが、この先も、もし掲載号がみつかることがあれば比較のために買い求めようと思う。ただ数千円とかになると考えるが、これまでのところ、500~1500円程度だったのでまずはこのまま推移してほしいところである。
今回ようやく読んでみて、思いのほか原作に忠実だったことを知った。他の三作品もそういえばかなり原作を活かしていたと思う。ただし、「人間椅子」だけは結末が違う。それと「お勢地獄」も末尾の一ページ分だけだが違う。
すると、「芋虫」では、少年雑誌に夫婦の性生活にかかわる描写がなされることになるが、これもぎりぎりながら描かれていて驚いた。当時は今と異なり規制も緩かったのだろう。現在では、むしろ性問題以外の身体描写に何か言う人もあるかも知れず、いや、それよりも、今こそ再び、金鵄勲章を軽んじるとは何事だ、とわざわざ言い出す人がいたらすごく厭だが、そこまではまあないと思いたい。
それともうひとつ知ったのは、この「芋虫」タイトル表紙の絵柄が、あきらかに、講談社版の『江戸川乱歩全集』第一回目の版(およびそれを踏襲した第二回目の版)に入っていた、永田力による「芋虫」の挿絵をモデルにしていて、なるほど、このころ、特に「少年キング」で石川球太以外にも横山光輝や古賀新一を起用してさかんに江戸川乱歩作品を漫画化していたのは、この、乱歩没後最初の全集が大いに人気であったからなのだと感じたことである。

今また、江戸川乱歩没後50年をむかえ、いよいよ多メディアに乱歩的なものが増殖してゆくのだなと思うととても楽しみだ。

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